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テキスト:清水伸夫
フェスの主役はアーティストだけじゃない。オーディエンスも主役になれる。「ぐるぐる回る」が誇るインスタレーション企画がそれを実現する。
今年は「コドモパンクス」と「100人オープンマイク!」が行われる予定だ。その字面だけでワクワクしませんか? いったいどんな企画なのか? どんな楽しみ方ができるのか?
「コドモパンクス」のキュレーター・ドイウロコ氏、「100人オープンマイク!」のキュレーター・鈴木氏とスタッフのノーツフロムアンダーグラウンド氏(以下ノーツ)、
昨年行われた「100人ビートルズ」のキュレーター・關氏、「ぐるぐる回る」代表・川瀬&北原両氏に集まってもらい、その魅力を語ってもらった。
――今日は「ぐるぐる回る」におけるインスタレーション企画の魅力について聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。まずは「コドモパンクス」とは?
ドイ:子供が楽器を鳴らしている姿っていうのが、個人的にはバンドよりもおもしろくて。で、2006年に児童館で子供に自由に楽器を鳴らしてもらう催しをやってみたら、すごくおもしろくて。第2回の「ぐるぐる回る」でキュレーターを募集しているという話を聞いて、前主催者だった竹内さんに企画をお話しして。
そうしたら竹内さんも「そんな企画を待っていた!」と乗ってくれたのが「ぐるぐる回る」での始まりですね。
――なるほど。実際にどんな感じで行われるんですか?
ドイ:基本的には子供たちに自由に楽器を鳴らしてもらうっていうだけなんですよ。
――YouTubeで動画を拝見したんですが、子供たちがメチャメチャやっていると思いきや、ちゃんと音楽になっているところが素敵でした。あの子供たちは本当に素人というか…?
ドイ:仕込みじゃないですよ(笑)。お客さんとして来てくれた子供たちです。
あとは出演アーティストのお子さんとか。なので、子供が集まるかもしれないし、そうじゃないかもしれないし、暴走するかもしれないし…。やってみないとわからないという(笑)。
なので、お子さんを連れて来るお客さんにはぜひ立ち寄って参加してもらいたいですね!
――あと、年齢制限とかってありますか?
ドイ:子供を盛り立てる意味で大人が参加することはあるけど、主役は子供ですね。まぁ赤ちゃんから小中学生くらいまで…って感じでアバウトではあるんですけどね。
高校生とかが場を荒らすようなことがあったら遠慮してもらうかもしれないけど。
――わかりました。子供ってとにかく叩くのが好きですよね?(笑)
ドイ:そうなんですよね。なんなんでしょうね。人間の根源的な欲求なんですかね…。なので、太鼓メインで用意していますよ。
でも、自分の子供が一心不乱に楽器を鳴らしている姿は、親ならちょっと感動すると思いますよ! ウチの子、こんな表情するんだ!ってね。
關:日本の家庭って音楽が身近にないですよね。敷居が高いというか。だからなかなか音楽に接する機会が少ないですよね。
「コドモパンクス」も音楽自体に興味をもってもらうひとつのきっかけになれば素晴らしいですね。
北原:たしかに。ピアノとかバイオリンとか…習うことから始まるのが普通になっていて。そうじゃなくて欲望の思うままに叩いてみるとか、鳴らしてみるっていう。それはすごくいいな。
――そうですね。そうやって音楽をやる人がどんどん増えるといいですね。
關:やる人が増えるとマーケットも広がりますね!
川瀬:アーティストが乱入して子供とセッションとかしてくれたらいいな。
ドイ:昨年は、Kiiiiiiiの子供さんが大人に向かって「よし、やるぞ!」って煽ってて(笑)。そういうのは見ていて本当にすごいと思いましたよ。
――じゃあ次は「100人オープンマイク!」お願いします。
鈴木:そうですねぇ。そんじょそこらの「オープンマイク」と一緒…ではないです(笑)。
基本的には何をやってもいいんですよ。それがその人の表現であれば。「コドモパンクス」で組んだバンドに出てもらってもいいですし(笑)。
ノーツ:バンドのライブって30分とかじゃないですか。率直に30分見るのがしんどいなとか(笑)。
あと、今のバンドとかって、いろんな繋がりのなかで活動していますよね。メディアとか、SNSとか、関係者とか…音楽以外での活動が重要になりつつあると思っていて。
そういう営業活動から解き放たれた表現というものに魅力を感じるようになって。
「100人オープンマイク!」は表現ひとつで目の前のお客さんに披露して、そのリアクションがダイレクトに返ってくる場で。
つまり、スゴイ表現をすればスゴイ賞賛をされるシンプルな場所。それが今大事なことなんじゃないかなと思って始めました。
――なるほど。ちょっと難しい話になりましたね(笑)。
鈴木:でも、俺がこの前出たオープンマイクでは、老人が普通に楽器を勉強して、孫のことを思って作った歌を披露していてね。そういうのもアリですよね。俺は表現者だぜ!っていう人もいるし、もっと趣味に近い人も存在して、ごちゃ混ぜになっているのが理想ですね。
北原:あー。おじいちゃん、おばあちゃんが「ぐるぐる回る」に来て、そんな歌を披露してくれたら嬉しいよね。感動する。
――根本的なところでは、表現することにプロもアマもないですよね。みんな表現者だし。
鈴木:ただ勇気はいるからね(笑)。でもそれを乗り越えると素晴らしい瞬間が待っていると思う。
川瀬:でも、なんでこれを「ぐるぐる回る」でやろうと思ったの?
ノーツ:いろんな「村」があると思うんですよ。それぞれがそれぞれの「村」でやっているんだけど、「ぐるぐる回る」くらいの大きな規模でやれば、自信のある人間がどんどん出てきてくれるかなと思って。それがありますね。自信とか、表現を通じてみんなが繋がるというか、そこが目指すべきものですね。
――ちなみに、飛び込みで参加することもできるんですか?
ノーツ:基本的にはOKです。ただあまりに人数が多くなったらわからないですけどね。
北原:でも、人のライブ見ていると自分もやりたくなるよね。テンションあがって。
川瀬:アコギとか置いてあるといいよね。
ノーツ:あ、機材はもうこっちで用意してあります!
――おー、いいですね!
川瀬:音楽以外の人もどんどん出てほしいな。マジシャンとか、お笑いとか、切り絵のスゴイ人とか。文化祭のイメージ。そうなってほしいし、そうなってくれるとスゴイおもしろい。
ノーツ:「ぐるぐる回る」ってなんでもウェルカムだと思うんですよ。ふるいにかけるようなことはしないで。
北原:そうですね。だから漫談でも、高校生のバンドでも、なんでもウェルカムだね。
――ちなみに「100人ビートルズ」とは昨年やっていたものですよね? どういったものだったんですか?
關:埼スタで何をやったらおもしろいかなというのが始まりで。その名の通り、100人でビートルズを演奏するという、お客さん参加型のインスタレーションです。
けっこうこれは言葉きっかけで(笑)。言葉だけでキャッチーですからね。そこまで深いコンセプトがあるわけじゃないんですよ(笑)。
ノーツ:えーそうなの? 關くんが代表をつとめるBlack Boxっていう団体は、いろんなパフォーマンスをやっているんだけど。
彼らは自分たちのやっていることを説明したがらないんですよ。語ってしまうことで表現から離れてしまうのが嫌なんだと思うんですが。
でも、100人ビートルズはメッセージがあったでしょう?(笑)
關:っていうのを言わないのが僕らなんで(笑)。空気でおもしろそうなことが伝わればいいんですよ。
――たしかに分析しすぎて本質から乖離していくことはありますよね。
ノーツ:そうですね。だから今年の「100人オープンマイク!」もとにかく楽しそうな人に参加してもらいたいですね。目立ちたがり屋でいいんです!
川瀬:うんうん。僕がイメージしているのって、ほんとに「彼女に告白しまーす」みたいなやつ(笑)。そういうのもアリなんだよね?
ノーツ:それもアリですね。
――青年の主張的な?(笑)
川瀬:そうそう。
ノーツ:表現を通じてお客さんと繋がれれば何でもOKです。
川瀬:ちなみに100人じゃなきゃいけいの?
ノーツ:いや、そんなことはないです。多くてもいいんです。1000人でも。
――なるほど。フェスって音楽を聴きに来るのはもちろんなんだけど、今までのお話を聞いてると、それだけじゃないっていうのを提示したいのかな、と。
客として来たんだけど、実は自分も表現者だっていう。そういうのってなかなかないんじゃないですか?
ノーツ:あー、そういうことですね。やっぱフェスに行くとテンションあがるし、なにか表現したくなる。その思いをぶつけてほしいですね!
ほんとにシンプルに。一夜にしてヒーローになれる!かも(笑)。
關:夢がありますね。
――「コドモパンクス」もその辺は同じですよね。
ドイ:そうですね。合間合間に大人が子供に楽器を教える時間もありますし、子供が参加したいなっていう仕掛けも用意してあります。
特に子供はライブとか見ると、楽器を鳴らしてみたくなるんじゃないかな。
――そもそもなんですが…「コドモパンクス」ってなんでパンクなんですか?
ドイ:よく言われますね(笑)。パンクって政治的な部分もあるんだけど、こんなんでもいいんだとか、これなら俺もやってみようみたいな所もあるじゃないですか。
その辺の自由さを表現したくて。そういう意味で言うと、「100人オープンマイク」とも繋がってきますね。
關:初期衝動ですね。
川瀬:100人オープンパンクですね(笑)。
ノーツ:そう、なんでもやっていいんだ!という。
――素晴らしい。思春期に親に言ってほしかった言葉ですね(笑)。ともかく、大人も子供も何か表現したい奴は、「ぐるぐる回る」に来てやってみろ!という。
場は用意してあるからってことですね。当日が楽しみになってきました! 今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。皆さんの参加を待ってます!